経営の針路

しばらく更新をおやすみしていました。では書評から。

「経営の針路」(平野正雄著)を読みました。

日本企業がなぜうまくいかないのか、何が問題なのかを鋭く分析した一冊。

まず、視点が広いことに驚かされる。3つの視点、グローバル化キャピタリズム、デジタル化の3つの変化がどのような状況にあるのか、それに対して日本企業はどのように対応してきたのか、をわかりやすく解説している。また、日本企業のこれまでの成功体験を振り返りつつ、それが変革を妨げており、経営が変われなくなってしまっていることに警鐘を鳴らしている。

日本企業のグローバル化は単純なもので、後追い型の戦略であったのはその通りだが、新興国の人づくりを日本が担ってきた側面についてはもう少しおさえていてほしかった。日本なりのグローバル化をしてきたことは評価されるべきだろう。

あと、人づくり革命がこれから政府のほうでも議論されるようだが、これまで生産性をあげるための伝統的な技術継承は行われてきたのかもしれないが、いわゆるデジタル化にあわせた人の育成は行われてこなかった。ましてや、本書で指摘されているような株主重視経営や社会への貢献のための経営といった考え方は、日本企業においてまったく育っていないだろう。

安定的経営を目指しすぎるがあまり、どうリスクをとって経営するのか、がわからないのである。

単によいものをつくるだけではだめで、よいものはデジタル化によってすぐに陳腐化してしまう。こうした中でどのように経営と現場の関係を構築していくか、大変難しい課題であると思います。

最後に、トランプやBREXITといった問題にも触れながら、世界が向かっている方向性にも触れながら、日本がどのように進むべきかについても論点として挙げている。日本のおかれた立場を大所高所から理解して、これから何を社会や企業がめざしていくべきか、考えるための良書といえよう。